ミステリやら、サスペンスやらを書くときに使うかもしれない小道具、「遺言書」
現代日本におけるその取扱いなどを自分用にまとめてみました。
覚え書き程度ですので、あしからず。


1.遺言書の種類

 遺言書は原則的に封書です。
 自宅保管の場合は裏に相続人の名前と覚書があったほうがよい。
 サスペンス的には
遺言執行人に預けているケースが多いですね

・自筆証書遺言

 ⇒全文自筆で記す。日付、名前、押印が必要
 ⇒作成無料
 ⇒証人不要
 ⇒保管場所は不定

・公正証書遺言
 ⇒公証役場にて、公証人による代筆
 ⇒作成有料
 ⇒証人2人必要
 ⇒原本は公証役場で保管 正本と原本は自己保管

・秘密証書遺言
 ⇒署名以外はワープロ可
 ⇒作成有料
 ⇒証人2人必要
 ⇒遺言書の存在のみ、公証役場で保証
 ⇒保管場所は不定


ところどころに出てくる、『証人』は弁護士なり会計士なり、そういった役職の人に置き換えてもらえばわかりやすいかと思います。また、公証人とは、それらとは別の役場勤めの職業人です。

以上のうち、「秘密証書遺言」は少しわかりにくいと思うので補足しておきます。
「秘密証書遺言」は、事前に作成しておいた遺言状(封書)を公証人に提示することで、証人と公証人がその遺言の存在を保証する、といったものです。
「秘密証書遺言」と「公正証書遺言」の違いは、「公正証書遺言」が遺言の内容まで保証しているのに対し、「秘密証書遺言」は遺言の存在のみを保証している点です。そのために、「秘密証書遺言」は時として遺言の法定様式から外れていることもあります。


2.遺言書の開示

・自筆証書遺言
 ⇒相続人全員への呼び出し状の発行
 ⇒家庭裁判所での検認手続き
  (要)相続人全員の戸籍謄本

・公正証書遺言
 ⇒すぐに遺言執行が可能

・秘密証書遺言
  ⇒相続人全員への呼び出し状の発行
  ⇒家庭裁判所での検認手続き
  (要)相続人全員の戸籍謄本

ミステリによくある、「大広間に親族全員を集めて、弁護士が預かっていた遺言状を読み上げる」というシチュエーションは、”公正証書遺言”をお抱え弁護士が管理し、また"遺言執行人"にも指名されている場合が考えられます。
また、"自筆証書遺言""秘密証書遺言"が検認前に開封された場合も厳密には法的効力を失うとのことです。

余談ですが、遺言書の偽装について調べていた時に面白い判例を見つけました。
「カレンダーの裏に書かれた遺言が、署名捺印日付が記された封筒の中にあった」という案件に対して、判決が「遺言と封筒が同時に書かれたものだという確証がないため遺言の法的効力を持たない」というものでした。
結局、レイアウトさえ法定様式に準じていれば何に記されたものでも効力は持つのでしょうかね。


(参考)
日本公証人連合会
遺言書の書き方と文例