表題の記事をニュースで読んで気になったので、元の論文を流し読みしてみた。

(表題の記事はこちら ⇒ 福島第一原発周辺のモミに異常
(論文はこちら ⇒ Morphological defects in native Japanese fir trees around the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant


論文に書いてあって、ニュース記事になかったことを数点。
まだ、ニュース記事を読んでない方はそちらをお先にお読みください。



①「変異」を起こす放射線以外の要因


 論文のDiscussionの前半の内容

 この調査では”新芽の欠損(あるいはそれに伴う変化)”が形態不全の指標として用いられている。

 しかしながら、この新芽の欠損を引き起こすものは突然変異だけでなく、動物や鳥の食害によるもの、あるいはその他の物理要因によるもの、更に霜などによっても新芽の欠損が引き起こされることがわかっている。

 ただし、汚染レベル以外に、新芽の欠損率の地域間の推移を説明できる環境要因がほとんど存在しないこと
 さらに、外的な力によって新芽が除去されたのだとすると、2年間のラグ(新芽の欠損率は事故の2年後、2013年に最も大きくなった)が説明できなくなることには留意しなければならない。
 
 蛇足ではあるが、放射線の影響で針葉樹に前述の変異が生じることは実験室レベルの調査に加え、チェルノブイリ事故の際の調査でも確認済み。(そのため、今回の実験ではモミを指標として用いた)


②調査手法

 調査地域は下図の通り。S4は対照群
 2015年1月に調査を行った。
 srep13232-f2

 調査に際して用いる指標は、モミの木の主幹の(縦方向の)新芽の欠損である。
srep13232-f3

上図Aは通常の個体であり、Cは主幹の頂芽の形成不全が起きている個体である。
主幹の頂芽形成不全が生じると、上図Bのように側枝が上方向に伸び二股に分かれたような形態になることがある。
今回の調査では成長した年ごとの形成不全も遡って観察するが、Bのような形態はその際の指標となる。

(頂芽優性で調べると詳細が見つかると思います)


なお、どの年に変異が起きたかを推察するためには下図のモデルを参照
srep13232-f1




③細かいデータ

全体のデータはニュースで取り扱っていたため、省略

それ以外に、年ごと遡ったデータが存在する。

srep13232-f5
いずれの高線量地域においても事故直後よりも2年後に顕著に影響が起きている。

また、側枝の観察結果は下図の通り。
地域、年代に対して顕著な変化は見られなかった。
srep13232-f6


以上です。



最後にちょっとだけアブストの和訳


2011年3月の福島第一原子力発電所の事故の後、放射線に曝露した周辺地域の生物学的変化には多大な注意が払われてきた。

我々は今回、福島第一付近のモミを調査し、通常の土地に比べ新芽の欠損を始めとする形態の変化が著しく増加していることを確認した。また、これは観察地域の放射線汚染レベルとの相関性が見られた。
この新芽の欠如は事故から一年後、2012年の春以降の伸長に対して観測された。

これらの結果から福島第一周辺のモミの木に観測された形態学的変化は放射線核種の汚染による可能性があると推測される。


以上です。


何か間違い等ありましたらご連絡ください。
使用した図表はいずれも論文より引用いたしました。