ニュース自体は09月18日当たりに公開されたものですが、昨日ツイッターで話題になったのでちょっと読んでみました。

ニュース記事はこちら⇒【京都】炭酸ガスと水で効率的に石油を合成と発表



京都大学名誉教授の今中忠行さんの研究ですね。
京都大学には今中さんという名前の有名な先生が他にもいるのでややこしいのですが、今回話題になっているのはこちらの今中さん。
紫綬勲章の受賞歴もちゃんと京都大学のページに載ってます。⇒ (紫綬褒章 — 京都大学)
この人の研究では微生物から石油を作るっていうものが結構あちらこちらで目にしますね。
それに、まあ微生物関係の分野では当たり前ですが、環境浄化もやってるんですかね。

さて、まあ何はともあれ、今回はニュースになっている研究についてです。
ニュース記事から読み取れる概略としては、水と石油の混合物にCO2を通すと石油が増えるというもの。

さて、では論文を見てみましょう。

今回のニュースになっている論文はこちら
An efficient way of producing fuel hydrocarbon from CO2 and activated water
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/cl/advpub/0/advpub_150720/_article)


オープンアクセスではないので実際に読んでみたい一般の方は購入する必要がありますが・・・・
大学などで包括契約されてる方はどうぞ

ジャーナルはChemistry Letters、 インパクトファクターは1.23です。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

早速中身を見てみましょう。

①実験のメソッドについて。
 この実験では水、石油(軽油 and ケロシン)、二酸化炭素、酸素、二酸化チタン(触媒)、を用います。
 また、全ての反応は室温、常圧で行われます。
 
まず、水にナノバブル化した酸素を通します。
   ⇒水が酸素リッチの状態となる

次に、溶液に触媒である二酸化チタンを加え、UV照射します。

   ⇒酸素がオゾンになり、ラジカル反応が生じやすくなる

このオゾンリッチな溶液はCO2と次のように反応することが考えられます
  ①( 2CO2 ⇔ 2CO + O2 )
  ②( CO + H2O ⇔ CO2 + H2 )
 従って、全体としては次のようになる
   ( CO2 + H2O ⇔ CO + O2 + H2 )

ここで、オゾンリッチな溶液をCO2 および 石油と激しく混和します。
   ⇒溶液は乳濁液となる

再び二相になるまで静置すると、油層の体積が5~10%増えています。
   
⇒著者はいくつかの中間体を経て下記の反応が進行したと考えている
   ( n CO + (2n+1) H2 ⇒ CnH2n+2 + n H2O )


②生成物について/総括
 生成物と反応前オイルに対してテストを行い、その結果が表で記されています。
 結果として大きな変化はなく、『発火点』『粘度』等がわずかに上昇、また分留の際の温度も多少上昇しているようです。
 
 さらに筆者はガスクロで炭化水素の成分分析を行いましたが、こちらも大きな差がないため、オイル中に含まれる炭化水素の成分比は変化していないと考えられます。

 この結果を持って、筆者は350Lの二酸化炭素が250mLの石油になったとし、近年のエネルギー危機の解決とCO2の削減に大きく貢献する技術であるとしています。


③”私”の感想
 
合成屋さんでもなければ、化学畑の人間でもない私なので、果たしてこんな反応があり得るのか否かは何とも言えません。
 ただ、このプロトコルでは(また、論文にも書いてないと思いますが)途中で加えた軽油の作用がはっきりしないのではないかと。
 ただの反応の場としてのミセルを作る基材なのかどうなのか。
 この点でリバイスがかからないのは化学系論文では普通なのか、あるいはIFの低いジャーナルだからなのか。
 ひょっとしたらDNAのように炭化水素が鋳型になったり……するのかなあ?

 ガスクロの結果から炭化水素の構成比は変わらなそうだったし、炭化水素ごとの定量と
 あとは網羅的な元素分析の結果が欲しいなあ
 なんとなくTiO2の残留が影響してるんじゃないかなと。素人考えだけど


 化学系の諸先生方におかれましては、
その辺りのことをTwitterやらなんやらで教えていただけると幸いです



はい、以上です


追記
補足記事です⇒
『炭酸ガスと水で石油合成』 3円で100円のエネルギー?:論文を読もう(補足と検討)

追記②:
リファレンス(参考文献)にwikipediaが載っているという話を耳にしたので確認してみました

yoku
確かにありますね…… よくこんなの気付くなあ


追記③
石油に二酸化炭素が溶けたために体積が増えたのではないかという意見がありました。
実際に化学屋さんの間では二酸化炭素は有機溶媒に溶けやすいことが知られていて、また炭化水素を見ようとしたガスクロでは二酸化炭素は検出されないために、このような結果になったのではないかというものです。

餅は餅屋ですね。納得しました。


追記④:

反応前後の物性試験の結果ガスクロのスペクトル についてはツイッターの方に載せています。
リンク先をご覧ください。