避妊用ピルは男が飲んでも効果があることが判明! : オレ的ゲーム速報@刃

上記サイトの訳が致命的に間違っているので、訂正しがてら元の論文を読んでみようと思います。

では、まず誤訳の訂正から。

上記記事では、あたかも女性用避妊薬で男性も避妊できるかのような文面とタイトルになっていますが、元記事を読んでみると、あくまでも免疫抑制剤によって女性用経口避妊薬と同じような効果が得られるとしか書いていません。
その下の段落ではその旨が記載されてはいますが、記事構成的に2段落目は誤訳したものだと思われます。

女性用の避妊薬はホルモン剤ですので、今回の研究で用いられた免疫抑制剤とは全く別物です。


なお、まとめブログで訳されていない部分では

 ・ 実験で用いられたものと同じような薬(免疫抑制剤?)は既に臨床の現場にあること
 ・ 従来、男性用の避妊の手段としてはパイプカットくらいしかなかったこと
 ・ 今回の研究でターゲットとなった酵素(カルシニューリン
 ・ マウスの研究では、性交と射精は問題なかったこと
 
  などが記載されていました。


さて、では早速論文に移りましょう。

 リンクはこちら⇒
 Sperm calcineurin inhibition prevents mouse fertility with implications for male contraceptive

 この研究は阪大微研の伊川先生のところの研究ですね。

 伊川先生といえば精子形成の研究などで有名な方で、izumo(精子と卵子の膜を結合させるタンパク質)などを発見されてますね。

 ジャーナルは天下のScienceIFは33.611です。

※ ※ ※ ※ ※
 簡単にまとめていきます。

①背景
 カルシニューリンというタンパク質はカルシウムシグナルの中核を担い、また免疫系においてもT細胞の活性化に携わっている。

 タクロリムスシクロスポリンAといったカルシニューリンの阻害剤は臓器移植後、拒絶反応を抑える薬として用いられてきたが、動物実験の結果、これらの薬剤はオスの精子形成に悪影響を与えることが明らかとなった。
 さらに、精子に直接これらの薬剤を添加した実験においても、精子の運動性や先体反応に影響を与えることが分かっている。

 また、カルシニューリンには複数の種類があることが知られている。


②実験

[1]メカニズム解明

 (1)どのカルシニューリンがどこに分布しているのかを調べた
   ⇒睾丸に特異的に分布するカルシニューリンが存在した

 (2)実験(1)で見つけたカルシニューリンをノックアウトしたオスマウスによる受精の成功率を調べた
   ⇒ノックアウトマウスでは交尾の成功率が著しく下がった

 (3)実験(1)で見つけたカルシニューリンをノックアウトしたマウスの精子で体外受精を試みた
   ⇒ノックアウトマウスの精子では受精の成功率が著しく下がった

 ※この時点で精子が卵子の透明帯を通過できていない可能性が明らかになった

 (4)透明帯の干渉を減らす薬物を培地に添加して実験(3)と同じ実験を行った
   ⇒ノックアウトマウスと通常マウスに差は見られなかった

 ※この時点でカルシニューリンが”完全な”精子形成に必須ではないことが示唆された

 (5)透明帯の通過に必須な先体反応を調べた
  ⇒先体反応に差はなかった

 (6)精子の運動性試験を様々な見地から行った
  ⇒超活性型精子がノックアウトマウスでは減少していることがわかった

 (7)超活性型精子について、通常のマウスとは異なる挙動が観察された(中片の硬化)

 (8)カルシニューリンの近くに存在するカルシウムチャネルの遺伝子をノックアウトしたが変化はなかった

 (9)微小管のスライド頻度を比較したが、通常の精子との間に変化はなかった
  ⇒ミトコンドリア鞘を取り除いたしたところ、通常の精子と同じような挙動が見られた


[2] 免疫抑制剤の影響

 (1)シクロスポリンやタクロリムスをマウスに2週間投与した
  ⇒オスマウスは不妊となり、体外受精も失敗した
  ⇒運動性を観察したところ、上記のノックアウトマウスと同様の挙動(中片の硬化)を示した

※精子の形成の後期段階においてカルシニューリンの働きが重要であることが分かった

 (2)短期間の観察を行った
  ⇒シクロスポリンでは5日後、タクロリムスでは4日後に中片の硬化が見られた
  ⇒精巣上体を通過するのに10日かかるため、この期間でカルシニューリンが作用している可能性

 (3)精巣上体への移行中に作用しているならば、投与中止から生殖機能復活までの期間は短いはずだ
  ⇒実際に、投与中止から1週間でマウスの生殖機能は復活している


③ 知見

 ・ 今回マウスでターゲットとした種類のカルシニューリンはヒトにも存在している

 ・ シクロスポリンを投与された患者に不妊を示したものはないものの、精子の運動性が低下しているという報告はある

 ・ シクロスポリンの血中濃度と精子の運動性は逆比例する報告がある



以上です。
ガバガバな翻訳だと思うので、Twitterにて色々ご指摘いただければ幸いです。