こんな記事を見かけたので、簡単に調べたところを書く。
1. ゾアントロピー(zoanthropy)について

 Weblioによると、ゾアントロピー(zoanthropy)とは「獣化妄想」「あなたが動物の形をしているという妄想」とある。

 また、医学用語であるようなのでPubmedで検索してみると5件の論文がヒットした。
 このヒット数はgoogleでの一般検索結果(約 1,410,000 件) と比較するとあまりに少なく、正式な用語・症例名というよりも俗語的な意味合いの言葉であることが推測される。
(あるいは、Webメディアが面白おかしがって頻繁に取り上げるせいかもしれないが)

 なお、Wiktionaryでの「zoanthropy」記事における引用元(ハーバード大学で電子化された昔の辞典)によれば、1913年のwebster's revised unabridged dictionaryにおいてのみ記述が確認される。(下図)
zoan

2. 冒頭の記事で取り上げられていた論文について

 冒頭のニコニコニュースで取り上げられていた研究は、この論文のものだろう。
 フリーアクセスなので誰でも読める論文ではあるのだが、いかんせん言語が良くわからない。
 Google先生によればオランダ語だそうだ。さすがに、自分が全く理解できない文章を機械翻訳だけを頼みに記事にするのは気が引ける。この論文についての詳細な解説は、オランダ語に堪能な方にお任せする。
 
 少し気になるのは、Pubmedでヒットした"Zoanthropy"論文5件のうちの2件(本論文とReviewではあるが)が同じジャーナルのものであり、更に残った3件のうちの2件がドイツ語の論文である点だ。
 さらに言うなれば、残った1件の英語論文もZoanthropyというよりは、後述するLycanthropyに注目したものとなっている。
 先述のWebster辞典を信じるのであれば、Zoanthropyという単語がドイツ/オランダ語特有の単語であるというわけではないように思うが、なんとも不可解だ。


3. ライカントロピー(Lycanthropy)について

 Zoanthropyという言葉と似たような意味を持つ単語として、Lycanthropy:狼化(Weblio)という単語がある。
 こちらの単語では、医学論文に限った検索ツールであるPubmedで47件ヒットし、様々なジャンルの文献を対象としたGoogle scholarでは約 3,980 件ヒットした。
 この結果を見る限り、意味は限られるものの学術用語としては、こちらの方が一般的であるように思われる。
 しかし困ったことに、このLycanthropyという単語は単純に精神病における妄想の一形態として用いられることに加えて、文化史的な文脈(魔女狩りであるとか、狼男の伝承であるとか)でも用いられることが多いように思われた。
 
 こちらのLycanthropyのReview論文などは短くまとまっているので、後で読んで記事にしても面白いかもしれない。

 いずれにせよ、細かい解説記事は時間が取れた時に書くとして、この記事はこの辺りで留めておこうと思う。