ちょっと調べて考えました。
1.前提
 まず、ウマ娘プロジェクトの二次創作ガイドラインは各位ご確認いただいていることと思います。
重要な点は以下でしょう。
許諾をいただいて馬名をお借りている馬主のみなさまを含め、たくさんの方の協力により実現している作品です。
モチーフとなる競走馬のファンの皆さまや、馬主さまおよび関係者の方々が不快に思われる表現、ならびに競走馬またはキャラクターのイメージを著しく損なう表現は行わないようご配慮くださいますようお願いいたします。
 また、実在の競走馬の名前を用いることでの問題点については、ギャロップレーサーやダービースタリオンの判例をご確認ください。私は専門家でも何でもないので。

 また、ここでは「エログロは”イメージを著しく損なう表現”に含まれるのかどうか」という議論はしませんので悪しからず。


以上を前提知識とした上で考えます。


2.馬名の使用について
 上記の判例では、「パブリシティ権」はあくまでも人に適用されるものであるとの原則の上で、馬主は競争馬という資産的に価値ある物を有しているだけであり、仮にゲーム等で馬名が使われていたとしても、「その競走馬を有する」という馬主の権利は侵害されないとしています。また同時に、現行法においては、「物を指し示す言葉(=馬名)」に対して所有者の独占的な使用を認めるものはないとしてします。
 ものが競走馬だからややこしくなっていますが、例えば芸術品の所有者はその芸術品を持っているだけであって、作品名を取り上げることは誰でも所有者の許諾を得ることなくできると言い換えれば多少は理解しやすい気もします。
 ここで注目すべきなのは、馬名のパブリシティ権を否定する根拠が、馬名に消費者を誘引する価値があるかどうかではなく、そもそもパブリシティ権というものは人にしか適用されないとしている点です。そのために、仮に馬名を前面に出した(”釣り”のような)作品があったとしても、それはパブリシティ権の面においては問題ないと考えられます。
 まあ、いずれにせよ、これはあくまでも「馬名の使用」という一点に限られますことを御留意ください。

 一方で、馬名と実在馬の同一性については考えるべき問題でしょう。仮に、実在馬の資産価値を貶めるような二次創作(以下、危ない二次創作)が存在した場合には、偽計業務妨害辺りは適用可能じゃないかと思います。
 まあ、風刺画で訴訟が起きるかどうかという程度の話である気もします。類似した事例としては石に泳ぐ魚事件辺りでしょうか?これはあくまでも実在の人物に対する人格権の問題で少し違いますし、私も専門ではないのでよくわかりませんが。


3.馬名の使用契約について
 「ウマ娘の二次創作」ということで考えるのであれば、ここが一番リスクの高いところかと思います。
 Cygamesが馬主から「許諾をいただいて馬名をお借りている」旨は上記の二次創作ガイドラインにおいても明らかとされています。
 その許諾を得た契約内容については想像に過ぎませんが、普通に考えるのであれば、Cygames側は馬名の使用の権利を得るために一定の義務を有していると考えられます。
 「二次創作に対して」というシチュエーションに即して表現するのであれば、馬主の要請に応じ、著作権所有者として二次創作の規制/訴訟に動きやすくなっていると言えます。

 先に挙げたように、馬主が直接、馬名を用いた作品に対して訴訟を起こすことは(資産価値を著しく棄損するものを除き)困難でしょう。
 一方で、Cygamesが間に立つのであれば、通常の二次創作と同様(場合によっては、馬名を用いているためにキャラクターの同一性の問題は従来よりも担保されている可能性あり)の問題になるかと思います。

 またこれは、あくまでも私法の話になりますので、「パブリシティ権についての判例によればCygamesは馬名の使用許諾を得る必要はないから、こんなリスクはない」と主張したところで無意味です。先の判例においても、馬名の使用許諾を得るための契約の有意性については否定していません。


4.まとめ
 以上、私の考えを総括するのであれば、ウマ娘の危ない二次創作については、「従来の二次創作問題と大きく異なる点はないものの、グレーゾーンは従来以上に狭くなっているもの」となります。
 個人的には、単純に権利所有者が別側面からの二者になるだけでも、かなりリスクは高くなるように感じますが、まあこの辺りの価値観は人それぞれでしょう。
 より卑近なリスクであれば、自警団的なリスクもありますが、そもそも自警団に見つかりバッシングされるというのは訴訟までの過程ではなく、バッシングされるという結果ですので、そこで愚痴るような方はリスク感覚を磨きなおした方が良いかと思います。

 また、一般的な二次創作問題とした場合に「コスプレしてるだけの一般人」についてはどういう扱いになるのか自明ではありませんので、議論は控えます。