定期的に話題になる、以下のサイトの記述について調べました。


1. はじめに

 この記事では、「実際に」「どこでも」年輪と方角は相関するか、といった議論をするわけではなく、あくまで「全く」相関しないかどうかについて調べています。

 ポイントは次の2点です。
 ・ 地面の傾斜や遮蔽物等、他の要因がない環境で生育している木における年輪と方角の関係
 ・ 木の幹の生育における光の影響


2-1. 他の要因がない環境で生育している木における年輪と方角の関係

 元サイトでは、以下のように記述されていたため、文献調査しました。
 「広い野原のようなところで孤立した木なら成立するはずだ」なんていう頭の中で思いついただけの理屈を言う人がいますが、そんなの、孤立していようがいまいが同じです。

 こちらの研究は、化石林の年輪と現存している樹木の年輪の偏心を比較し、地殻変動の影響を評価したものです。
 論文中では、XiangshanとHongshiに生育する253本の木について評価しており、Xiangshanの木の年輪は南西に広くなっていること、Hongshiの木の年輪の向きはバラついていることが示されています。Hongshiのバラつきについて、筆者は、サンプリングの偏り(傾斜や日陰のものをサンプリングした可能性)について言及しており、南西が光屈性の方向であるとしています。
 また、同一著者の別の論文では、以下のように記述されています。
There is little doubt that the eccentricity of tree growth rings should be related to the direction of sunshine.


2-2. 木の幹の生育における光の影響

 こちらについて、元サイトでは次のように記述されています。
「光の方向に植物が伸びていく」という屈光性の法則と、年輪の肥大成長をゴッチャに考えていませんか。前者は茎の先端の話ですし、後者は樹皮と木部の間に存在する形成層の話です。
 アーティフィシャルな実験として、こちらの論文は、茎に対する重力と光の影響を評価しています。
 光屈性について、論文中では苗木に直上あるいは側方から光を当てた後の茎の傾きを評価しています。
 その結果、側方からの光照射で有意に茎の曲がりが確認されました。
 また、この時、茎の分化が確認されていることから、筆者らは観察された光屈性は細胞伸長の違いによるものではないとしています。
 さらに、伸長を終えた木質茎を放射状に成長させていたことから、これらの木質茎の活発な光屈性は、縦方向の成長応力の非対称性に起因する可能性が高いとしています。


3. 個人的感想

 最初にも書いたように、元サイトの記述に対する反証をしたいわけではなく、 オーバーディスカッションな部分がないですか、程度の記事です。
 そもそも、基礎的なテーマすぎて原著論文があまり見つからなかったため、この記事の検証としての妥当性も少し疑問が残ります。
(2-1で引いた研究も、類似のテーマが同じ研究グループからしか出てないので……)

 ただ、よく引用されている総説でも、屈性としては光屈性よりも重力屈性の方が影響大としていますし、実用を考えるなら方角の影響は限定的かなとは思います。

 また、今回の記事作成にあたって、年輪についての最近の研究もざっと調べてみましたが、地滑りの評価ツールとして利用しているものが多いようですね。(物理的な外力が年輪の形成に及ぼす影響)
 勉強になりました。

 何か追加資料等ありましたら教えてください。

4. 参考資料
  1. Jiang, Z., Liu, B., Wang, Y. et al. Tree ring phototropism and implications for the rotation of the North China Block. Sci Rep 9, 4856 (2019).
  2. Jiang, Z. K. et al. The Phototropism of Jurassic petrified wood in North China Plate. Acta Geological Sinica 88, 1352–1355 (2014).
  3. Matsuzaki, J., Masumori, M., & Tange, T. Stem phototropism of trees: a possible significant factor in determining stem inclination on forest slopes. Annals of botany, 98(3), 573–581 (2006).
  4. Correll MJ, Kiss JZ. Interactions between gravitropism and phototropism in plants. J Plant Growth Regul. Jun;21(2):89-101(2002).